2012年2月16日木曜日

自分で座れない~脳卒中でマヒが重度の場合~初期評価編~

今回は、脳卒中の方で重度麻痺を呈している方の初期評価とその予後、
本人・家族のニーズが「歩きたい」「歩けるようになってほしい」場合を想定して、
評価項目から検討します。

各週で行っている勉強会で
「どうやって初期評価をして、治療を行っているの?」との質問から端を発しています。
なるべく簡単に。

0.電子カルテで情報をとる
 年齢→やはり年齢が若いほうが改善が早いです。
 既往歴→基礎疾患や生活習慣を確認。リスク管理や運動負荷を考慮できる。
 CT・MRI画像→出血や梗塞巣の大きさ・部位を確認。
        運動機能や高次脳機能障害がでるだろう事を予想するため。

車いすではじめて来室した来た時を想定しています。
以下の手順でおおむねすすめていきます。(あくまでも参考です。)

1.意識状態・コミュニケーション(車いす上)
 JCS/EVMの両方で表記。訓練従命が入るかどうかをチェック。
 やはり意識がクリアの方が改善は早い。
 血圧もあわせてチェック。
2.Br.Stage・健側筋力(車いす上)
 上肢はOTに確認。下肢機能は股屈曲できるかを確認。(下肢Ⅲより上か、下かを判断。)
 できない場合、重度と考えて、健側筋力を測定。
 座位でできる股屈曲、膝伸展、足背屈をチェック。
 MMT 4以上であれば、トランスファーは軽~中介助と想定。

3.トランスファー能力・坐位バランス
 1.2で総合判断して、介助量を想定。はじめての時は全介助する場合もあり。
 そのまま端座位ex実施。静的保持できるか、外乱刺激に保持できるか、
 動的に動けるのかをチェック。
 静的保持ができない(座れない)と判断したが、背臥位になる際は全介助する。
 (体幹コントロールがとれていないため)

4.筋緊張・腱反射・クローヌス
 背臥位にて触って左右差を確認して緊張の違いをチェック。
 そのまま表在感覚を確認。
 いつも「違いありますか?いい方がが10なら悪い方はどれくらいですか?」と聞きます。

5.ROM・深部感覚
 ROMにてSLRと足背屈を確認。その際にも筋のつっぱり感がでるかをチェック。
 (被動性(動かされた事)による緊張の亢進があるのかないのか)
 その際に股・膝・足それぞれに位置覚をチェック。
(例:股関節の場合:閉眼してもらい、SLRにて上下に5回程度
   他動的に動かして答えてもらう。)
8.再びBr.stageⅡor失調検査
 レイミステ反応か、activeでできるのかをチェック。

9.寝返り動作・無視or身体失認あるかの高次脳チェック
 介助量をチェック。
 その際、上下肢を意識して介助できるのかどうかで高次脳障害をみます。

10.訓練
麻痺促通ex・寝返りex・端坐位exを5-10回を目安に実施。
その時に適宜判断。
訓練終了後の血圧をチェック。
sBPが安静時20-30mmHg以上upまたは「疲れた。」などの自覚症状を聞いて終了。

この流れで30-40分。休憩を含めながら行っています。

この流れで本人の運動機能の状態を把握する事は「必要」ですが、
大切なのはこのやり方とか技術ではないと思っています。

大事な事はいかに本人に疲れさせないように楽にできる事に配慮する事であり、
セラピスト自身が余裕を持って理学療法に取り組む事ができ、
何より患者さんの気持ちに触れる時間をしっかりとつくれるになる事、
お互いを知り、信頼をつくりあえる事に楽しみや喜びを持ってほしい、
自分自身も持っていきたいと切に思ってます。

次回は治療編を考えていきます。

2012年2月11日土曜日

リハビリでの運動負荷の方法~廃用・ope後・認知症の場合~

訓練中に気にして行う事。訓練の導入の仕方を考えます。

基本はやはり評価に基づいた治療です。
患者さんの「できる」とセラピストが思っている「できる」の評価がずれてしまうと、
患者さんはただ疲れてるだけ。僕自身も「あれ~。できるはず。。。。。」と
適切な評価ができなかったために、無理無理「ただやる」だけに。
新人の時、すごく悩みました。

この評価から決定する方法が臨床経験を踏まないとわからない難しさと面白さだと思います。つまり訓練の難易度の設定を考える事が必要。
大事な事は適切な評価のもと、患者さんに達成感、つまり「できたね!」と
成功体験を持ってもらえる事をこころがけます。
自分の良くなっているに気づいてもらえるようにほめる。
できる限り具体的にほめます。その事を本人に気付いてもらう事が大切だと思います。

またセラピストとしては、動作能力と本人の気持ちのいい反応が引き出せたなら
その時、本当に心から一緒に喜べます。少しでも違和感、ズレを感じたらすぐに修正(再評価、訓練方法の変更)をするようにします。
(セラピストの介助・ポジション、適切な声かけ、ジェスチャーは後述。)
今回はその時のステップアップの方法を簡潔に考えます。

・廃用による筋力低下の場合
 筋力MMT3以下の場合、個別に筋力増強を行う。
Upの仕方は背臥位にて徒手抵抗で10回実施。
イメージはその人の最大筋力の50-60%で行う。
(特に股屈曲・外転筋である腸腰筋・中殿筋が落ちやすい)
その後、持久力upの目的でactiveにて30回実施。
それも実施できるようになったら抗重力位にてactiveに運動。
ここまでできれば3+レベルに到達できているので、個別筋力増強をやめて、
抗重力運動としての立ち座り・ハーフスクワット・カーフレイズを10回ずつ実施。
こなせてきたら30回実施。それも可能になれば踏み台昇降exにて筋力増強。
その時点で歩行は到達できるレベルになっているので徐々に歩行距離upもはかります。
訓練の終了基準は「ちょっときつい」運動。Borg Scale 12-13をこころがけます。

イメージは10回程度こなせる質の向上(筋力up)と
30回はこなせる「量」の向上(筋持久力up)を狙っています。

・術後疼痛を伴う場合(骨折や人工関節後の場合を想定)
 痛いのはNGと考えています。Face scaleで1前後までです。
しかしそれは実施しないと言う意味ではないです。
術後で痛いのはもちろんなので、運動時、荷重時のf.sが 3以上であれば
坐薬での疼痛コントロールを病棟にお願いしてます。
それでもf.s3以上であれば患部に対するその幹部へのアプローチは時期尚早と考え、
痛みのでないようにアプローチを変える、
やり方・運動量を変えて、筋力増強を多めに行います。

・認知症が重度で訓練従命が入らない場合
 指示が入らない場合、動作訓練を通しての筋力増強を行います。
立ち座り・横歩き・歩行が中心になりますが、
少し介助が多くなったとしても誘導して歩行訓練等を行います。
終了後は、自覚症状が聞けないので表情やバイタルサインなどの
他覚症状で全身状態をチェックしています。


どの訓練場面においても必ずタッチするようにします。
痛みの場合、どこが痛いのか、何をすると痛いのかを話してもらい、
熱感の度合いも含めて触りながら教えてもらいたいからです。
筋力増強に関しても狙った所が鍛えられているのかを触って確認します。
なので30回行う時は最初の2,3回は必ずチェックします。
効果的な訓練をしてほしいからです。

まだまだ半人前ですべてを実行できているとは思っていません。
しかし患者さんが少しでも楽に、リハビリした事が実感を伴って
動きと気持ちに反映してくれればといつも思ってます。